艤装と船殻
タイトルの漢字は両方とも舟ヘンでギソーとセンコクと読む。
また船の話。私は学校で電気工学を修めたが就職先は造船所だった。故郷の坂出に川重の新鋭造船所が、私の就職時期に合わせて完成した。母親ひとりを故郷に残していたので何れUターンするなら、丁度そこで働けたら手間が省けていいと思った。しかし就職に失敗し仕方なく大学院へ行く事を決めていたら、景気が上向いて卒業土壇場で川重から追加採用の話が来た。渡りに船とばかりに面接に行った。御社の工場が故郷に出来たので是非そこで働きたいと申し出たが、配属されたのは神戸工場の機械事業部だった。5年程神戸で勤務して結局その後坂出に転勤させてもらった。三十何年も後になって当時の面接官に会う機会があった。子会社の社長になっていた。勿論私のことなど覚えている筈もないから、坂出を希望したのに配属は違っていたとの苦情を当時の思い出話として酒の肴にしただけだである。
話がそれたが、船を造る組織として、鉄板で船の構造体をつくる部隊とエンジンやプロペラ、発電機等を搭載して船が動くようにする部隊の二つがある。前者を船殻、後者を艤装と呼ぶ。どちらの部隊も役割毎に更に細かな組織に分割される。当然私は電気の艤装を担当する電気艤装、その他にエンジン等の機械を担当する機関艤装、荷役装置を担当する船体艤装、ペンキ塗りを担当する塗装、パイプを作る管工艤装などがある。
艤装屋は船殻の事を、あんたらは船のドンガラを造るだけじゃないか、船が動くようにするのは艤装でしょう・・・と。一方船殻屋は艤装の事を、よそから物を買ってきて動かしているだけじゃないか自分では何にも作っていない・・・と悪口を言い合う。
艤装を長くやって、子会社へ出向になった。今度は管理職として船殻工場の面倒を見る事になった。もちろん専門知識はないが、物づくりは現場を見たら分かる。素材の鉄板や型鋼を切る、曲げる、引っ付けるなどしてブロックを造る。そしてそれらを接合してより大きなブロックにし、そして最後は船の形になる。
船殻を経験して初めて納得した。やはり造船所は船の構造を造ることがメーカとしての本来の仕事。艤装はなくては成り立たないが所詮は脇役。本来の仕事をしてきた人が製造業ではTOPになるのは当然かも知れない。
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