浮世絵
父は私が学生時代に脳溢血で他界した。65歳だった。私が18歳で家を出て社会人になる前に父はもう亡くなっていたから、じっくり酒でも飲みながら人生を語るチャンスはなかった。
だから父がどんな人生観を持っていたのか、どんな考えを持っていたのかは今となっては知る由もない。
切手とか古銭とか浮世絵を収集するのが好きだったようで、とりわけ未使用の記念切手シートを良く見せてくれた。中でも「見返り美人」や「月に雁」は、これをシートで持っていると自慢していた。
切手の収集品は母が弟に形見分けしたのか、いつの間にやら我が家から消えた。
残っているのはここに紹介する浮世絵。本物か贋作かは「開運なんでも鑑定団」に見てもらわないと分からないが、葛飾北斎とか歌麿の名前がある。
収集品の中には所謂「春画」と言う今のポルノ画もたくさんある。だから浮世絵は父からも母からも「こんなものがある」と見せてくれた事はなく、出窓の物入れにあるのを私が偶然見付け、チラッと見ては慌てて隠したものだった。
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