日本のはじまり
田村神社 創始一千三百年記念事業
①国のはじまり
天と地がまだ分かれてなかった時、この国はまるで水に浮いた油のように、海に浮かぶクラゲのように漂っていました。
②神々のお生まれ
その中で高天原(タカマガハラ)と言う天のとても高いところに、天の中心の神【天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)】が生まれ、次に全てのものを生み出す神【高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)】、【神産巣日神(カミムスヒノカミ)】が生れました。
③国生み
さてはじめに現れた3人の神達は、最後に現れた【伊邪那岐神(伊弉諾神)イザナギノカミ】、【 伊邪那美神(伊弉冉神)イザナミノカミ】を呼び、「地上はまだ油のように漂っている。しっかりとつくり固めなさい」と言われ、天沼矛(あめのぬぼこ)と言う立派な矛を授けました。
そこで二人の神は天と地の間にかかる天浮き橋の上に立ちました。どろどろとした地上へ矛を突き下ろし、『こおろ こおろ』とかきまわしました。さっと引き上げると矛の先からしずくがぽつりぽつりと滴り落ちました。
その滴り落ちたしずくが次第に固まって、ついに島になりました。この島を「おのごろじま」と言います。
④国のはじまり
二人の神は天浮き橋からおのごろ島へ降りてみることにしました。そして周りを見渡し、ほど良いところにあめの御柱をたて、大きな宮殿を建てました。
二人の神はこの柱をぐるぐるとまわり、夫婦になる約束をしましたが、最初はうまくいきませんでした。そこで高天原の神に相談し、占いをしてもらったところ「女の方が先に声をかけたからうまくいかなかったのだ。戻って言い直しなさい」と言われ、ふたりの神は言われたとおりにやり直したところ、今度は夫婦になることができました。
こうしてふたりの神は多くの神を生み出したのです。
⑤火の神の誕生
ふたりの神は、まず日本の国の島々を生み出しました。次に家の神、海の神、風の神、山の神、食べ物の神などさまざまな神を生みました。
最後に火の神を生んだ時に、ひどいやけどをおって、とうとうイザナミはこの世を去って、黄泉の国へ旅立っていってしまいました。イザナギをはじめ生れた神達はとても悲しみました。
⑥黄泉国(ヨミノクニ)
イザナギはいとしいイザナミを追って、よみの国まで旅立ちました。出迎えたイザナミは喜んで「黄泉の国の神に、帰っても良いか相談して来ますから、その間は私の姿を見ないで下さいと言いました。
しかしイザナギは待ちくたびれて、遂にイザナミの姿を見てしまいました。そこにあったのは体中に、うじがたかり雷の神がとぐろを巻いた姿でした。イザナギはその変わり果てた姿に驚いて逃げてしまいました。
イザナミはとてもくやしがり、よもつしこめ(黄泉醜女)と言う鬼に命令をして、イザナギを追いかけさせました。イザナギは一生懸命に逃げて、よもつひらさか(黄泉比良坂)の麓までたどりつきました。
そこに生えていた桃の実を投げつけたところ、桃の力によって鬼達は逃げ帰っていきました。
⑦黄泉比良坂(よもつひらさか)の別れ
何とか鬼達を追い払ったところに、とうとうイザナミが追いかけて来ました。黄泉比良坂を登ったイザナギは、千人がかりでやっと動くような大岩を坂の真ん中に置き、その岩を間に置いたままイザナミに別れを告げました。
イザナミはとても怒って、「あなたがそのようにひどいことをするなら、あなたの国の人々を一日に千人づつ殺してあげましょう」と言いました。
これに対してイザナギは「あなたがそんな事をするのなら、私は一日に千五百の産屋を建てて子供を生ませることにしよう」と言いました。
このようなことがあったので、一日に千人の人が死に、代わりに千五百人の人が生れるのです。
⑧禊袚い(みそぎばらい)
イザナギはよみの国でけがされてしまった体を、筑紫の国の日向(ひむか)のたちばなのおどのあはぎはらで、禊袚いを行いました。
みそぎとは体に水をかけて、けがれを清める事だから、身に着けていたものを全て脱ぎ捨てました。イザナギは川にもぐり体の穢れを清めました。
左目を清めた時、天照大神(アマテラスオオミカミ)が生まれ、右目を清めた時つくよみのみことが生まれ、鼻を清めた時すさのおのみことが生まれました。
イザナギは大変尊い神が生まれたと喜びました。イザナギは高天原を天照大神に、夜の国をつくよみのみことに、海の世界をすさのおのみことに治めるように夫々の世界を任せました。
⑨天の岩戸
すさのおのみことは母に会いたいと泣き叫び大人になるまで、海の世界を治めようとしませんでした。それを見たイザナギは怒り、すさのおのみことを海の世界から追い出してしまいました。
すさのおのみことは姉に別れを告げに高天原へ行きました。高天原へ行ったすさのおのみことは大変な悪さをしたために、天照大伸は怒り悲しんで天の岩屋に入って、その戸を閉めてしましました。
そうしたところ、世界は暗闇に包まれ悪いことばかりが起こりました。こうしてはおけないと沢山の神達が集まり、美しい声で鳴く鳥を鳴かせてお祈りをしたり、みんなで大きな声で笑ったり踊ったりしました。天照大伸は不思議に思って天の岩戸を少し開けて様子を窺ってみました。
そこへ力持ちの神が手をかけて天の岩戸を一気に開けて、天照大伸を引き出しました。こうして世界は元通りに明るい光を取り戻しました。
⑩八俣(ヤマタ)の大蛇(オロチ)
さて、とても悪い事をしたすさのおのみことは、高天原からも追い出されて出雲の国のひのかわの上流に下りました。川沿いに上っていくと老夫婦と若い娘が泣いていました。
すさのおのみことは何故泣いているのか訊ねると、老人は「もともと私達には八人の娘がいましたが、八俣の大蛇と言う恐ろしい怪物に毎年一人づつ食べられて、今はこの娘しか残っていません。この娘も食べられてしまうのかと思うと悲しくて泣いていたのです」と言いました。
そこですさのおのみことは大蛇退治を自ら引き受けて、娘と結婚する約束をしました。
⑪八俣の大蛇退治
すさのおのみことは老夫婦に桶に入れた強いお酒を用意させました。そこへ真っ赤な目をした八俣の大蛇が、八っの頭と尻尾を振りながらすごい勢いでやって来ました。大蛇は桶を見つけるとすぐに中のお酒を飲み出しました。
飲み終わると大蛇はすっかり酔っ払って桶のそばで眠ってしまいました。それを見たすさのおのみことは大蛇を長い刀でずたずたに切り裂きました。
大蛇の中ほどの尻尾を切ったところ、刀の刃が欠けてしまいました。不思議に思ったすさのおのみことは、そこを切り開いたところ、すばらしい刀があらわれました。
とても珍しい刀だったので、これを天照大神に差し上げました。これが後に草薙と名付けられた刀です。
こうして大蛇退治を成功させたすさのおのみことは、娘と結婚して出雲の国に立派な宮殿をつくりました。
⑫因幡の素兔(シロウサギ)と大国主神(オオクニヌシノミコト)
おおくにぬしの神には沢山の兄がいました。因幡の国に美しい姫がいるとの評判で、兄達は結婚を申し込みに行くために、大きな袋をおおくにぬしに背負わせ、付き添いをさせました。
旅の途中、みさきで毛皮をむかれて赤裸になった兎が倒れていました。おおくにぬしは訳を聞くとうさぎは「私は向こうの島に住んでいる兎です。何とかこちらのみさきへ渡りたいと思い、鮫をだまして渡ろうとしたところ騙していることがばれてしまい、鮫に毛皮を剥ぎ取られてしまいました。そこへ先に通った神様達が言うとおり、塩水を浴びて風に当たって寝ていたところ、余計に痛くなってしまったのです」と言いました。
それを聞いたおおくにぬしは「川の水で体を洗い、ガマの穂綿に身をまとえば、きれいに直るだろう」とうさぎに教えてあげました。言うとおりにしたうさぎは元のきれいな体に戻り、大変喜びました。
⑬天孫降臨
天照大伸は自分の子供に地上を治めさせようと思い、いろいろと考えて孫にあたる邇邇藝能命(ににぎのみこと)を下らせました。ににぎのみことは下ろうとすると、八方に分かれた道で異様な姿をした神が行く手をふさいでいました。
そこでお供の神に訊ねさせたところ、その神は「私は猿田彦の神と申します。道案内をしようとお迎えに来ました」と言いました。
これで道案内ができ、お供の神たちも決められて、天照大神はやさかのまがたまと鏡、草薙の剣をににぎのみことに授けました。
天照大伸は「この鏡は私だと思って大事におまつりしなさい」言われ、現在もこの鏡は伊勢の神宮に、やさかのまがたまは皇居に、草薙の剣は熱田神宮にまつられ、これを三種の神器と言います。
こうしてににぎのみことは高天原を離れ、空に浮かぶ何十にも重なった雲を押し分けて、筑紫の日向のたかちほに下られ、そこに立派な宮殿を建てました。
神さまの話は面白い。
コメント