さぬきの昔ばなし(ゆうへんさん)
ずーっと昔、飯野山の近くにある島田寺(丸亀市飯山町)に「ゆうへんさん」ちゅうものすごい力の強いおしょうさんがおったんや。
ある時、ゆうへんさんが高松の弘憲寺に用があって来とった。用がすんだけん、いのうとしたら(帰ろうとしたら)、弘憲寺のおしょうさんがゆうへんさんの力をためそうとしたんか、「うちの大門をあげましょう。どうぞお持ち下され」と言うたんやと。
ゆうへんさんは喜んでその大門を軽げに肩に担いで帰ってった。
弘憲寺のおしょうさんは、なしなった大門の跡に呆然と突っ立って、ゆうへんさんの後ろ姿を見送ったんやと。
ゆうへんさんは額坂峠まで来て、ちょっと休もうと大門をおろし、大きな松の木を折り曲げて腰かけとった。
ほんだら馬子が来て、馬の手綱をゆうへんさんの腰かけた松の木にくくりつけようとしたけん「これ。この木につなぐとわしが折り曲げて座っとるきん、立てったら馬がつりあがるぞ」と言うたんやと。
「おしょうさん、てんご(冗談)いうたらいかんわ。そななほっこげな(馬鹿げた)ことあるかいな」言うて馬をその松にくくりつけた。
「そろそろ帰るは」いうてゆうへんさんがひょいと腰を上げたとたん、馬は宙づりになってしもうた。
馬子は手をついて「もういらんこと言わんけに、こらえて(許して)いた」と頼んで、馬をおろしてもろたんやと。
ゆうへんさんが担いできた大門は「一荷かつぎの門」いうて、今でも島田寺に残っとるんやて。
弘憲寺に行くときについていた鉄のつえや、碁を打って帰った碁石の跡が深うひっこんだ碁盤や力試しした大きな石も弘憲寺には残っとるんやと。
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