さぬきの昔話(おろくダヌキ)
昔、ある山の上に本法寺(綾川町羽床下)という寺があり、そこには「ねぜり松」いう昼でも暗いぐらいようけ枝をはっとる松の木があった。
その幹の根元近くの穴に一匹のタヌキが住んどって、「おろく」と呼ばれよった。おろくはいたずらもするけど、不思議な力も持っとって、愛嬌があった。ほんで、寺のためによう尽くしたということや。
本法寺では仏さんを「なむみょうほうれんげきょう」と拝むんやが、そう拝まん人が寺に来ると、おろくはその人を寺に入れんようにするんやと。なんぼに門に近づけんで、いつまでもぐるぐると塀のまわりを回って「どうしたこっちゃ?」とへとへとになって座り込む人に、通りがかった村人は「あんた、おろくに化かされとるんや。なむみょうほうれんげきょうと一心に唱えてみ」と声をかける。
震えながら、目をつむってそう唱えたら、どうな。目を開けるとちゃんと本堂の前に立っとんやと。
それから、しょうねの悪い人には砂の雨を降らすんや。ザラザラザーとそらすごい勢いで降らすんで「うわぁ、おろくに見抜かれとる!もう悪い心は起こさん」いうて降られた人は逃げて行く。
また、おろくははよう気がつくたぬきでな。寺のおじゅっさんや小僧さんがばんげに帰ると、灯りをもって出迎えるんや。「おろく、おろく」いうて呼ぶと、灯りをもって出てきて、尾を振ったり、とんだりはねたり、後に先になって迎えてくれるんやと。
だいぶん時が経って、おろくの住んどった「ねぜり松」が切られてしもうた。ほんでもおろくはどこかに住み家を構えて、十五夜の満月の晩には「ぽんぽこ ぽんぽこ」と腹つづみを打って、ふもとの村に心地よい音を聞かせてくれたんやと。
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