さぬきの昔ばなし(ぜんわん岩)
遠い昔、田中村(木田郡三木町)の庄屋さんのうちで、息子の婚礼があったんや。
婚礼の日はあさってやというのに、二,三十人前のおぜんが足りん。心当たりをたんねてみたんやけど、どうしても足りんで、庄屋さんは困っとたんや。
そこに、ひとりのお年寄りがたんねて来て「おい!庄屋。わしは三つ子池の主じゃ。いつも正直なおまえに免じて、足らんおぜんとおわんを貸してやろう。あさっての朝早うに池の下の大岩へ行て、頼んでみい。けど、返す時にはけっこにそろえて、元のとこにまんでしのべとくんぞ」。そう言うと、その姿はじきに消えてしもうた。
庄屋さんは約束のあさってが待ちきれんで、夜が明けるとすぐに夢うつつで聞いた大岩の前に行って「明日の朝、早うに参りますけん、どうか足らんぜんわんを三十人前お貸し下さい」と祈ったんやて。
翌朝、約束の時刻に大岩に行くと、ちゃんと三十人前のおぜんとおわんがそろえてあったんや。庄屋さんはほんどり喜んで、めでたく婚礼をすますことがでけた。
ほんで、借りたぜんわんをけっこに洗うて、まんでそろえて、厚くお礼を言うてもどしたんや。それからは、だれかれなしに、寄り合いをする時にはこの大岩に来てぜんわんを貸してもらいよったんやって。
ある時、ひとりの横着者が借りたぜんわんをめいだんやがな。つくろいもせんまま「ひとつ二つめげとってもわからんわ。かもか」と大岩にめいだ断りも謝りもせんで、だまって返してしもうたんや。
それからは、だれが、どなに頼んでも、大岩はぜんわんを貸してくれんようになってしもうたんやと。
« プロ棋士 | トップページ | 自彊術生誕100年祭 in 坂出 のお知らせ »
「昔ばなし」カテゴリの記事
- 坂出の昔ばなし(「蛸埼」のいわれ)(2016.04.06)
- さかいでの昔ばなし(与島の妙見さん)(2016.03.01)
- さぬきの昔ばなし(ぜんわん岩)(2016.02.28)
- 坂出の昔ばなし(大師泉)(2016.02.14)
- さぬきの昔話(おろくダヌキ)(2016.01.19)
コメント