流水腐らず By 豊岡 倫郎 氏 2023年11月29日
1.流水腐らず
流水腐らず、戸枢螻せず(りゅうすいくさらず、こすうろうせず)という言葉がある。その意味は常に流れている水は腐らず、常に開閉している戸は虫に食われることがないということ。出典は中国古典『呂氏春秋』より。1904年に西式健康法を創設した西勝造先生がよくお話していた言葉である。何故なら西先生は毛細血管の体内での働きを重視していたからであろう。
2.今何故毛細血管が話題になっているのか。
ここ数年出版された本の数々を列挙すると、 高倉伸幸著「ゴースト血管をつくらない33のメソット」、赤澤純代著「血管の教科書」、池谷敏郎著「しなやかな血管で若返る」、根来敏郎著「毛細血管は若返える」などある。それで思い出すのは「人は血管と共に老いる」という名言を残した、1900年ごろ活躍したアメリカの医師・ウイリアム・オスラーである。
3.ゴースト血管とは
ゴースト血管とは、全身に張り巡らされている毛細血管が衰え、血液が流れなくなり、消えてしまう状態を意味する。毛細血管は、心臓から全身に血液を送る動脈と、全身から心臓に血液を戻す静脈との間を繋いでいる非常に細い血管である。ゴースト血管になると血流が悪くなり、全身に血液が行き渡らなくなる。むくみや冷え、肌のシワやたるみ、免疫力の低下、骨の老化など、様々な体の不調の原因となる。毛細血管の太さは5~15ミクロン(1ミクロンは千分の1ミリ)で、その中を血液の成分である赤血球、白血球、血小板、そして液体成分である血漿が栄養分やホルモンなどを含んで、流れている。赤血球は7~8ミクロン、白血球は10~15ミクロンがやっと通れる太さである。
4.毛細血管の働きが見直されている
体内の血管の総延長は約10万キロメートルある。地球二周半の長さに相当する。その血管の95~99%が毛細血管で占められている。
毛細血管は約100億本あるという。そして、今医学界でその働きが健康を左右すると注目されている。あなたの毛細血管ゴースト化していませんか。全身を流れる血液の総量は、体重の約8%と言われている。60㎏の人なら5リットルの血液が全身を流れている計算になる。心臓から押し出された血液は動脈を通って、段々細くなった小動脈から末端の毛細血管まで行くと、隣接する組織細胞に酸素と栄養分を供給して、戻る時には二酸化炭素(炭酸ガスともいう)と老廃物を受け取り、今度は小静脈から大動脈を通って、心臓に戻って来る。 体には約38兆個の細胞があり、心臓から出た血液が、体の隅々まで行き渡り、また心臓に戻って来る時間は平常時では約45秒かかるという。その間に5リットルの血液が一巡している。
5.ゴースト血管が体に及ぼす影響とは
血流の悪いところに病気が発生すると言われているように、体の隅々まで血液が流れなければ、どこに、どんな病気が発症しても不思議ではない。例えば、息切れ、便秘、肝機能低下、腎機能低下、むくみ、糖尿病、肺炎、アトピー症、リウマチ、骨粗しょう症、老眼、認知症、ガン、高血圧、動脈硬化、冷え症、シミやシワ、疲労など上げれば切がない。
6.ゴースト血管発生の原因
ゴースト化を早める原因には、加齢、運動不足、大食、活性酸素による酸化、AGE(終末糖化産物)、飲酒、砂糖、ストレスなどがある。これ等によって、上述した毛細血管の内皮細胞とそれを覆う壁細胞との密着が緩んでしまい、一連の毛細血管と細胞との代謝に障害が起きる。
西式健康法を創設した西勝造先生は、その著書「無病長生健康法」の中でこう述べている。「過剰な飲酒は動脈硬化を招き、グローミューは硬化したり、変質したり、開放しっぱなしとなる。糖分が過剰になると、糖尿病系となり、グローミューは消失したり、軟化したり、委縮する」と。
毛細血管の数は加齢と共に減少して行き、例えば皮膚では60~70代の人は、20代の人に比べて、約40%も減少していると言われている。尚グローミューとは動静脈吻合の事で、細動脈と細静脈の手前にあるバイパスのことで、寒いときには毛細血管が収縮しても血流が止まらないのもこのバイパスを通るからなのである。
7.ゴースト血管予防とグローミューの強化策とは
- 西式健康法では、毛管運動、温冷浴、裸療法をする。特に毛管運動は仰向けに寝て、両手両足を垂直に上にあげて、微振動をさせることによって、毛細管現象を促進して、手足の血流を良くするし、毛細管現象を再生させる。西式健康法では、血流の原動力は毛細血管の吸引力にあるという論拠から毛管運動を実行して、病気予防と治癒に効果を発揮している。
- 飲酒や砂糖の入ったお菓子や飲み物を摂らない。
- 大食しない。動脈硬化や高コレステロールを招く食品を摂取しない。肉類や砂糖はドロドロ血液を作る。
- 毎日健康体操をして体全体の血流を良くする。筋肉の拍動も血流をアシストしている。
- ビタミンCを生野菜ジュースや柿茶から摂取し血管を強化し、血液の質と流れを向上させる。
- 日頃から薄着を心がけて、皮膚を鍛える。
- ストレスに負けない強い精神力を養う。ストレスは血管を収縮させて血流を悪くさせる。腹式呼吸をすると副交感神経が優位になる。
- 壁細胞はアンジオポエチン1を分泌して、内皮細胞の受容体のTie2(タイツー)との連携で密着しているが、加齢などで隙間ができると、 一連の代謝が悪くなる。タイツーを活性化させる桂皮(シナモン)、香辛料のヒハツが効果的だと認められている。ルイボス茶には抗酸化効果があり活性酸素を中和し、過酸化脂質を減らす。
- 手軽に実行できるのは毎日散歩することと自彊術をする。「百聞は一験に如かず」である。体験してみることは大事です。
8.まとめ
1)人生100年時代到来と言われているが果たして本当だろうか?ここ二年日本の平均寿命が下がり
續けているのは怖い予兆である。毎日テレビではやれグルメだ、スイーツだと浮かれている。
いささかの反省もない。小学士の動脈硬化が進んでいる。悪い兆候ばかりだ。
2)「見た目が年齢だ」という言葉がある。それは毛細血管が若々しいからだ。シミ、シワがないのだ。
老いるか 若々しいか? 病気になるかならないか? それは毛細血管次第だ。
3)今世界中の先端医療が注目しているのは「毛細血管」であある。毛細血管は乱れた生活習慣によって、
老化のスピードは加速してきている。今一度わが身を振り返ってみようではないか。
前述の根来秀行著「毛細血管は若返る」主婦の友社発行は最先端の医学を基にして解りやすく
書かれているので、関心のある方は読まれたら良いと思う。
おわり
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