高齢化で避けられぬ病とは (その 3・動脈硬化) 2025.10.16 豊岡倫郎 氏
1、動脈硬化とは
文字どおり動脈が硬くなる状態のことで、その生成過程は加齢によるところが大であるが、個人差が大きく、最近まだ若い子供たちに増加している。それは食生活が影響している。血中のLDL−コレステロール(悪玉コレステロール)が多く、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)が少ないと、いわゆる脂質異常症となり、血管の内壁に脂質が蓄積し、動脈硬化が進みやすい。動脈硬化になると、血管や心臓に大きな負担がかかって心臓の機能が低下したり、血管が詰まったり、破れて生命にもかかわる大きな病気を発症するリスクが高くなる。動脈硬化には、粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)、中膜硬化(メンケベルク型動脈硬化)、細動脈硬化があるが、一般的に動脈硬化といえば、粥状動脈硬化のことを指す。
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2.今若年層の脂質異常症が増えている
動脈硬化の原因となる脂質異常症とは、以下のいずれか、または複数に該当する状態を指す。
- LDL(悪玉)コレステロールが高い(140mg/dL以上)
- HDL(善玉)コレステロールが低い(40mg/dL未満)
3.恐ろしい子供の血液検査の結果…子供の2割が脂質異常症
香川短期大学名誉学長の北川博俊著「子供を生活習慣病にしない食卓」2010年、主婦の友社発行。の本によれば、香川県高松市が2008年までに22066人に血液検査をして、脂質異常症が20.8%、肝機能異常が6.8%、肥満が10.9%であった。
その後、子供の血液検査の必要性が認識されて、全国的な展開を見せ、財団法人日本学校保健会が2008年調べたところ、小、中、高校生 4094人の23.8%が脂質異常症であった。
このような脂質異常症を発症するような生活習慣を続けるならば、20年から30年後の彼らの健康状態が思いやられる。
4.小児科医の体験談
小児科医の故真弓貞夫著「子供は病気を食べている」1993年家の光協会発行によれば、この本は著者が小児科医になって37年目に書かれた本である。真弓先生は今までに何冊も本を出されており、知る人ぞ知る“薬を出さない・注射をしない”自然流の子育てを提唱している。2003年に社会文化功労賞受賞。
主な要旨は、
- 人間が生きていくうえで、いちばん大切な食文化が、この40年間に徹底的に損なわれ、子供たちが危険に満ちた食生活の矢面に立たされている現実を、冷静に直視してきた。昭和30年を境にして食生活の環境の変換期であった。学校給食への牛乳の導入、無果汁ジュース、インスタントラーメン、市販ドレッシングの発売、加工食品には食品添加物や保存料、化学調味料が使われ、肉食、油もの、いわゆる欧米化食の普及が有る。
- 日本人として終生とり続けなければならない食べ物である穀類、野菜、海藻、小魚である。もしパン、卵、牛乳、肉類、熱帯の果物を摂るとよい、という誤った考えは、出来るだけ早く修正しなければならない。私が推奨している言葉は「マゴワヤサシイ」食である。「マ」は豆類、「ゴ」はゴマ、「ワ」はワカメ、海藻。「ヤ」は野菜、「サ」は魚、「シ」はシイタケ、コケ類、「イ」はイモ類です。しかもそれ等はその土地で採れるもの,旬のもの、全体食の少食が良い。
5.何故子供達に脂質異常症が増えているのか
原因は食生活の欧米化、高脂質化・・・肉大好きの子供たちの増加、油で処理した料理、揚げ物、炒め物の増加、糖分の多いスイーツや清涼飲料水の摂取。大食、運動不足。夜食、間食。ストレス。睡眠不足。肉食がスタミナが付く、という先入感からきた誤食がある。
6.なぜ脂質異常症が体に悪いのか、動脈硬化の生成の機序を説明すると、
ステップ1.
加齢や高血圧などにより血管の内皮細胞が傷がつき、そこから血管の内膜の中にコレステロールが侵入すると、体内の免疫システムが働いて、異物と認識して、白血球の単球が集まってくる。
ステップ2.
単球はコレステロールを処理しようとして、マロファージに変化し、処理するが、その残骸がコブの様になる。プラークと呼んだり、アテロームと呼ばれている。これはドロドロしたお粥状に似ているのでこれを泡沫細胞という。これが動脈硬化のコブ、すなわちプラークの発生の始まりである。
ステップ3.
プラークは更に大きくなるにつれて血管の内腔は狭くなり血液が流れにくくなり、血管壁も厚くなり、硬くなる。以上が動脈硬化の生成のプロセスである。
子供の頃からこの状態が20年から30年間じわじわと進行してゆくと、血管が詰まつたり、破れたりする。脳梗塞、心筋梗塞など命に係わる病が発症する。
7.動脈硬化の真の原因
1)動脈硬化を進行させる背景には、活性酸素があるという。活性酸素の世界的権威である故丹羽靱負博士によると、体内で発生した活性酸素が摂取したコレステロールや中性脂肪の脂質を過酸化脂質に変質させて、血管壁に浸透して行き血管を脆弱にさせるからだという。真の原因は活性酸素が犯人であるから、体内の活性酸素を減少させれば解消するという。事実SOD様作用食品(抗酸化作用がある)を使用して効果が認められた。
2)AGE研究で有名な牧田善二博士によると、血管の内側にある血管内皮細胞には、AGEをキャッチするアンテナ(受容体)があり、この受容体にAGEが結合すると、血管の内側が厚くなり、動脈硬化を促進するという。受容体とは、以下説明のRAGEの事かも知れない。
3)久保明博士著「糖化を防げばあなたは一生老化しない」によると、AGEには、RAGE(レージ)と呼ばれる受容体があり、AGEとこのRAGEが結びつくと、細胞内の情報伝達に変化が起こり、炎症シグナルが活発になる。体内の細胞の炎症が細胞の機能衰えさせて、血管壁の炎症が破裂しやすいプラークを生むという。なおAGEとは終末糖化産物ともよばれ、糖分とタンパク質が結合してできるタンパク質が劣化した老化産物のこと。血糖値が高い糖尿病の人は気付けたい。
8.まとめ
1)「この子にして、この親あり」と言う、おるいは「子供を診るなら、先ず親を見ろ」と言う言葉がある。なぜなら親の生きざまや親の躾け、生活環境、食生活の中で、子供たちは自づから身に着ける食育を親から受け継いでいるから。親の躾けがいかに大事であるか。しかしその親たちも学校給食で育っているから、果たして正しい判断ができるかが問題である。
2)以上、予防策としては活性酸素の害、糖化の害、慢性炎症の害の元と言わている脂漬け、砂糖漬け、アルコール漬けの大食生活から抜け出すことに尽きる。
3)これから増々少子化に入る日本に明るい未来が開けるのだろうか。予防策はまだ具体化していないのは、はがゆい。
おわり


























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