呼吸法で無病息災 By 豊岡 倫郎 氏 2024年10月30日
1. 呼吸法の歩み
最近呼吸法が見直されてきた。新進気鋭のハーバード大学客員教授の
根来秀行先生の本「毛細血管は若返る」に書かれている。
「横隔膜を動かす根来式腹式呼吸で毛細血管をゆるませ、血流アップせよ」
と、3種類の呼吸法が紹介されている。
そこで呼吸法の歴史を辿ると、
1)お釈迦様が悟りを開かれた呼吸法
お釈迦様は約2500年前35歳の時菩提樹の下で、7日間足を組んで、
呼吸を見つめる瞑想法によって、悟りを開いたといわれる。その瞑想法
とは、「大安般守意経」(だいあんはんしゅいきょう)と言うお経によれば、
「入る息は短くてよいが、出る息は努めて長くすることを心がけていくと、
次第に雑念が起こらなくなる」というもの。
これが後に丹田呼吸法の原型となる。なお丹田とはヘソの下 10~15㎝
当たりの腹側と背中側の中間部の空間をいう。ここに太陽神経叢があり、
自律神経のコントロール中枢があると云われている。
2)丹田呼吸法
この呼吸法は江戸時代の中ごろ、臨済宗の中興の祖と云われた白隠禅師
(1686-1762)の著書「夜船閑話」によって一般に知られるようになった。
白隠は厳しい修行によって禅病に罹り、これを克服するために京都の山奥に
住む白幽仙人から丹田呼吸法を伝授されて、「内観の秘法」「軟酥(なんそ)の法」
を確立して、禅病に苦しむ多くの修行僧たちを救うために「夜船(やせん)閑話(かんな)」
という丹田呼吸法の本を著した。因みに医師の村木弘昌著「白隠禅師・夜船閑話
に学ぶ丹田呼吸法」に詳しく書かれている。
3)このようにして伝えられた呼吸法や修行法は、明治に入り、調和道丹田呼吸法の創始者、藤田霊斎師(1868-1957)によって、多くの人が実践できるよう体系化された。
調和道丹田呼吸法は、二千数百年に亘り、修行者、武道家、芸道家たちの叡智と伝統により培われた呼吸法を、年齢や性別、国籍を問わず、どのような宗教や信条であっても開かれた形で実践できるよう体系化された呼吸法である。
4)同じころ岡田虎二郎(1872-1920)の岡田式呼吸静座法も有名ある。
5)更に二木謙三(1873-1966)の二木式腹式呼吸法がある。二木謙三先生は東京大学医学部教授、文化勲章受章、玄米菜食主義者で有名。二木謙三著「健康への道」によれば、胸腹式呼吸というのは、胸と腹と一緒に出て、一緒に引っ込んでゆく呼吸のやり方である。これが一番生理的な良い呼吸でる。即ちこの呼吸は、肺の呼吸面を平等にまんべんなく広くするため、肺全体が自由に呼吸するからよいのであると。
6)ヨガによる呼吸法では、沖正弘著「ヨガの喜び」によれば、ヨガの歴史は4,5000年前に遡る。人は訓練しないと、深く長い呼吸は出来ない。姿勢正しくすれば完全な深い呼吸ができる。
紹介されているのは、呼吸体操、完全呼吸法、クンバク体操など。
7)気功の呼吸法では、帯津良一著「自然治癒力」によれば、気功においては、吸うことにあまり意識せず、吐くことに神経を集中し。静かにゆっくりと、最後まで吐き出す。東大医学部卒でテレビでもおなじみの先生で、漢方薬,気功、食事療法などを取り入れた治療実績で有名。
8)藤平光一(とうへいこういち)著「気の確立」によれば、座禅や神道の呼吸法を修行して創始したのがこの基本的な気の呼吸法だという。 藤平光一氏は合気道の達人で世界中に合気道を広めた。王選手の1本脚打法を指導したことでも有名。
9)塩谷信男著「自在力」及び「大健康力」によれば、塩谷信男氏(1902-2008)は106歳の長寿を全うされて、正心調息法を創始。東大卒、渋谷に内科医院開設、治療にあたる。自らの白内障や前立腺炎をこの正心調息法で治し、また患者たちの治療に実績を上げた。
2. 正心調息法とは
1)正心とは、物事をすべて前向きに考える。感謝の心を忘れない。愚痴をこぼさない。
この3つの精神を忘れない事。
2)調息法とは
■ 姿勢
①背筋を真っすぐにして座る。座り方は正座、あぐら、椅子のどれでもよい。
②肘を直角に曲げて両手を組む。親指を重ね、利き手の方を上にして4本の指
を揃える。これを鈴の印という。
尚、体の弱い人は仰臥の姿勢でもよい。その時は両手を体の両側に伸ばして、
手のひらを下に向けて床面やふとんに着ける。
■ 呼吸法
①鼻から静かに吸い込む。肺の上部から下部まで一杯吸う。
②吸い込んだ息を、横隔膜まで下げて下腹部丹田まで押し下げて、丹田に
力を込めたまま、息を止める。この時肛門をギュッと締める。
③息を吐きだす。鼻から静かに息を吐き出す。腹の力を抜いて凹ませて息
を吐き切る。
④普通の息を1回する。
以上①~④までを1サイクルとして、25 回繰り返す。
病人は何回かに分けてもよい。1日合計25回になるようにする。
■ 想念・内観
25回終わったらゆっくり普通の呼吸をする。この時自分なりの公案を作り、
病人なら「病気が治った」とか「短気が治った」とか、過去形で想念する。
(注意点)
●実行は食後2時間後とする。
●呼吸法を実行すると、体の代謝が高まるから、好転反応が起きることがある。
下痢、腹痛、目まい、湿疹、頭痛など。体質が合わないとか、悪化したなど
ではないから心配いらない。
3.なぜ正心調息法が効果(俗に丹田呼吸法)があるのか
1)体内の細胞の隅々まで酸素を供給し、血液の流れ、新陳代謝を良くする。
なおガン細胞は 酸素に弱いので酸欠部分に発生するという。
2) 丹田を刺激して自律神経のバランスを計る。
3)吐く息は副交感神経が働き、吸う息は交感神経が働くから、長く吐くのである。
副交感神経の働きは心がリラックスして、血管が拡張して、血流が良くなる。
4)よって便通が良く。睡眠が良くなる、冷え症にも効果がある。
5)丹田を刺激するから、下腹部にある前立腺、膀胱、子宮の血流を良くする。
6)その他自律神経の安定は全身の肉体ばかりでなく精神的な安定をもたらす効果
は計り知れない。
7)想念・内観について。心静かに、深く長い呼吸を続づけると、自ずから内観瞑想
状態に入り、潜在意識が働き、思いが叶うのではなかろうか。
この件の詳細については、前出、塩谷信男著「自在力」及び「大健康力」を
参照されたい。
4.まとめ
1)原崎勇次著「医者いらず呼吸法」によれば、「病院に入院している患者が、
テレビ見たり、退屈したりしているのを見ると、呼吸法でもやれば、
入院患者の半分以上は、すぐ退院できるのに・・・」と思う。
と書かれている。一度試してみるとよい。道具も金もかからない。
2)但し呼吸法は万能ではない。食事療法が基本です。「腹八分に医者いらず、
腹六分に病なし」を守ってこそ健康が維持される事をお忘れなく。
おわり
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