1億総半病人列島の行方は By 豊岡倫郎 2025年6月11日
1. 生活習慣病大国日本の行方は
現在日本には肥満が3,400万人、高血圧4,000万人、脂質異常症2,400万人、糖尿病2,200万人、骨粗鬆症1,000万人、高尿酸症600万人居ると云われている。
現代医学が進歩していると云われているが、病人は減らない。どうしてだろうか。医者の投薬だけでは対処療法では治らないからである。
2. アメリカのマクガバンレポートとは
1970年代、心筋梗塞やガン、脳梗塞、肥満などの生活習慣病が多かったアメリカでは、1975年 上院に「栄養改善委員会」が設けられ、医学者に「全世界の栄養状態と病気の状態」を調べさせた。2年後に、5,000ページにも及ぶ調査報告書が出されたが、その冒頭に「アメリカの反省」が載っている。
これを見たマクガバン上院議員が「我われはバカだった。我われは造病食、殺人食を食べていた」と涙ながらに上院で演説したという話は有名である。
その主旨を要約すると、以下のようになる。
1. 1日のエネルギー摂取量の55~60%を炭水化物にする
2. 1日のエネルギー摂取量の30%まで、脂肪摂取を減らす
3. 飽和脂肪酸(バター、ラードなど動物の脂)と不飽和脂肪酸(魚油、植物油などの油)
の摂取量の比率を同等にする
4. コレステロールの摂取量を1日30mgまでに減らす
5. 砂糖の摂取量を40%減らす
6. 塩の摂取量を1日3gまでに減らす
そして、以下のようにまとめている。
具体的には、くだもの、野菜、未精白の穀物、鶏肉、魚、スキムミルク、植物油の摂取を増やし、牛乳、肉、卵、バター、砂糖・塩・脂肪の多い食物の摂取を減らすことによって、この目標は達成されなければならない……。
以来国を挙げてベジタリアン運動やノースモーキング運動、更に1990年代には国立ガン協会が「デザイナー・フーズ計画」を公表してガン予防に効果的な「食品ピラミツド図」を作成し啓蒙活動を開始した。
1991年には対ガン協会が「一日5皿以上の野菜を摂ろう運動を展開した。因みにこれは野菜350グラム、果物200グラムに相当。加えて病気予防と健康保持のための9項目を具体的に提示した。
その結果、2011年には1977年に比べて心筋梗塞による死亡数が58%、ガンによる死亡数が17%も減少した。先進国のG7加盟国としては、唯一ガン死亡者が減っている国となったのである。
3. 日本の現状
年間ガン発症者数は945千人、ガン死亡者数382千人と言う。また2024年死亡原因を見ると、
1位ガン24%、2位心疾患15%、3位老衰12%、4位脳血管疾患7%となっている。
4. 沖縄クライシスとは
沖縄は長い間、世界に冠たる長寿の島として知られていた。それが厚生労働省の調査によると、沖縄県の男性の平均寿命は県別で1985年に1位、1995年に4位だった。それが、2000年には26位に転落した。一方女性は1985~20005年まで1位を維持していたが、2010年には3位に転落。
男性も2010年には30位となってしまった。
この長寿を誇った県が凋落したことを、医学・栄養学関係者は「沖縄クライシス」と呼び、原因究明に乗り出した。
その原因として揚げられたのは、戦後アメリカの占領下となった沖縄は、アメリカ軍の食べ物がハンバーガー、ホットドッグ、ピザ、コンビーフといった肉食だった。それにファーストフード店がオープンして甘い飲料水がそれに加わった。いわゆる高カロリー、高栄養の食べ物に若者たちが飛びついた結果だったのである。正に高脂質化とAGEs(終末糖化産物)まみれの体を作り上げてしまったのである。
5. 長寿村の逆さ仏の話
もうひとつ教訓的な話をすると、かって日本の長寿村として有名だった山梨県棡原(ゆずりはら)地区に起こった異変、即ち「逆さ仏」である。逆さ仏とは親が子の葬式を出す現象をいう。
棡原(ゆずりはら)地区は鶴川の河岸段丘に発達した交通の不便な山の斜面に沿うて、家が点々とある所で、昔から米が摂れず麦を中心にアワ、キビ、ヒエ、トウモロコシ、小豆、大豆、ソバ,等の雑穀とバレイショ、里芋、甘藷、山芋、と豊富な野菜、山菜中心で、それに保存食として昆布、ワカメ、ヒジキを食べていた。正に身土不二の食生活であった。
ところが昭和30年ごろに待望のバスが開通した。若者たちの生活が一変した。一気に白米、肉、牛乳、ハム、砂糖,菓子、酒、ビール、が村に入ってきたのだ。そして「逆さ仏」現象が起きたのである。
6. 医療費の増大
2022年の国民医療費は46兆6,967億円で毎年1兆円ずつ増加傾向ある。医師の数は2022年現在34万人で、医療技術も進歩し、国民の栄養状態も向上して、すべてが順調に見えるのに、何故医療費が増えるのだろうか。
7. 医療に対する世界の潮流の変化
素問クリニック院長、真柄俊一著「食は現代医療を超えた」現代書林2015年発行によると、最近「食と医療」問題がアメリカを中心にクローズアップされ、このテーマに取り組む研究者や医師が急増してきた。アメリカでは食事を変えて病気を治そうとしている医師たちが加盟する「責任ある医療を推進する医師会」という組織があり、そのメンバーは2014年現在1万1000人以上に増え、大きな成果を上げている。食に対する考え方が激変している、という。正に世界の潮流が変わりつつある。
2014年9月、アメリカのサンディゴ市で、「植物性食品による国際医療会議」がアメリカを代表する有名な医師や研究者が18名パネラーとして登場し最新の研究報告を行った。世界中から15カ国400名の人達が参加した。しかし日本からの参加者はただ一人真柄俊一博士ひとりであった。こんな重要な医療研究の場に日本から一人しか参加しないということは、日本の医療体制の遅れを如実に示すもので、日本の致命的な危機をもたすものである。
8. まとめ
1)日本の報道の自由度は世界で72位である。新聞もテレビもスポンサーの方を向いている。国民に真実が伝わらない。例えば2018年5月、アメリカのカリフォルニア州裁判所はコヒーに「発ガン警告ラベル」の判決を下したなど。その他詳細は船瀬俊介著「ビィーガン革命」2022年ビオ・マガジン発行。参照ください。
2)石原結實著「日本人はもう55歳まで生きられない」2016年ビジネス社発行。によれば近い将来日本滅亡の危機にあると。日本人短命化の条件がそろっている。何故か、飽食が原因という。確かにテレビでは連日、やれスイーツだ! グルメだ!焼き肉だ! 爆食・大食い番組が目白押し。
何とか歯止めがかからぬものだろうか。
日本でアメリカのマクガンレポートを契機として政府指導の下に啓発を行った様なことを期待したいのであるが。
日本はアメリカより30年遅れているという。
「医食同源」が判っていない。
おわり
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